goldarn_ringのブログ

《ネルヤ》というニャオスの指輪 (@goldarn_ring) のブログです。指輪物語の言語ネタの記事とか書きます。

Pedithanc Edhellen!

はじめに

この記事は Tolkien Writing Day(http://bagend.me/writing-day/)の参加記事です。
記事のタイトルはシンダリンで「エルフ語を喋ろう!」という意味です。
はい、またまた言語ネタです。もう自覚しました。私の脳みそからは言語ネタしか出てこないんです……。

おすすめ関連書籍の紹介をテーマとしまして、シンダリンに関する資料を紹介していこうと思います。書籍だけでなくWebサイトも紹介します。

シンダリンがどんな言語か知りたい方むけ

グワイヒアのエルフ語講座 / The Wind in Middle-earth

ご存知の方も多いかもしれません。「エルフ語」でググったら3番目くらいに出てくる、非常に有名なエルフ語講座です。老舗のトールキン作品ファンサイト「The Wind in Middle-earth」内のコンテンツです。

分量は多くはないものの、とても分かりやすいシンダリンの文法解説があります。おもに動詞について解説されています。
メインなのは、シンダリン解説よりむしろ、「指輪物語」などの作中に地名・人名などの意味の解説でしょう。こちらはとても充実しています。単語の出典もしっかり書かれているので、信頼性も高いと思います。
テングワールの書き方講座「テングワール攻略大作戦」もすごいです。

指輪物語』エルフ語を読む

おそらく唯一の、日本で出版されているエルフ語解説書です。

シンダリンだけでなく、クウェンヤについても紹介されています。両方の言語について、歴史、発音、例文、文法など、かなり広い範囲を扱っています。
とくに例文は非常に豊富で、あいさつや日常会話などから、原作と映画に登場した台詞まで、単語ごとに意味の解説がされています。
他に、テングワールの書き方の解説と、少ないもののシンダリンの単語リストがあります。

エルフ語に興味のある方には、ぜひ読んでいただきたい本ですが、残念なことに絶版です。
まだの方はぜひ 復刊ドットコム で投票しましょう!!

Pedin Edhellen (日本語訳)

日本語で読めるシンダリン解説書の中では、おそらく一番詳しいです。

「a Sindarin-Course」(シンダリン講座) という原著の副題のとおり、シンダリンの入門書として書かれた本のようです。
代名詞、音韻変化、動詞など、それぞれの文法要素ごとに章立てして詳しく解説されています。例文なども豊富で、とても分かりやすいです。
シンダリンの文法を本気で学びたい方は、まずこの本から読んでみるといいでしょう。

ただ、解説されている文法は、原著者の推測によるもの (*マークがついていたり、グレーの網掛けになっていたりします) を多く含むので、その点は注意が必要です。

もっと深くシンダリンを知りたい方むけ

Pedin Edhellen (原著)

この記事で紹介しているシンダリン解説書の中では最も後発です。

他の解説書のあとに出版された一次資料 (トールキン自身によって書かれた資料) の内容も反映されているので、より新しいシンダリン文法を知りたい方におすすめです。
とくに、後述の「Parma Eldalamberon 17: Words, Phrases and Passages in Various Tongues in The Lord of the Rings」の内容が反映されているのは大きいです。
この資料によってシンダリンの文法がどう変わったかは、この本の1.2.3節、2.2.2節、9.2.1節などの内容を前述の日本語訳と比較してみると分ります。人称ごとの動詞の語形、とくに過去形の場合が大きく変わっています。

しかし、他が参照していない一次資料を参照している上に、その現物 は絶版であるため、前述の変更内容が本当に正しいかを検証することは、この資料を持っていない方 (私もです) には困難です。
調べられる限りの二次資料で調べてみたところ、2.2.2節の内容は裏が取れましたが、他は……うーん……。

Gateway to Sindarin

シンダリンの文法解説書では定番中の定番です。

シンダリンのほとんど全てが載っていると言っても過言ではないと思います (もちろん、この本の出版以前に出た一次資料に関しては、ですが)。歴史、テングワールとキアス、発音、文法などが非常に詳しく解説されています。
付録も圧巻です。本文に匹敵するページ数で、「指輪物語」などに登場するシンダリン文の文法的な解説、語根リスト、シンダリン↔英語辞書、人名・地名などの意味の解説など、非常に充実しています。

入門書というよりは、学術書とか研究書とか呼ぶべき種類の本なので、この本を最初のページから読んでシンダリンの勉強するのは、とても無理があります。

Ardalambion

このブログのこれまでの記事でもたびたび参照しているサイトです。
トールキン言語全般について、おそらく世界最高クラスに詳しく解説されているサイト なんじゃないかな、と思います。

シンダリンに限らず、クウェンヤ、アドゥーナイク、クズドゥルといった有名どころから、テレリ語、ヴァラール語、ドリアス語など「えっ、そんな言語あるの?」って思うような言語まで、すごく詳しく解説されています。

そして、詳しいだけでなく、記述の要所要所にしっかりと出典も書かれているので、信頼性もばっちりです。参照している資料の範囲も非常に広いです。

シンダリンの深淵を覗きたい方むけ

Vinyar Tengwar

Elvish Linguistic Fellowshipから発行されているジャーナルです。
1988年から刊行が開始されており、現在の最新号は2013年に出た第50号です。現在でも、公式サイトから全巻購入できます。

最初は、様々な筆者によるエルフ語に関する論文誌のような内容でしたが、ある時期から、クリストファー・トールキン氏の許可と提供を受けて、トールキン自身の未発表原稿を掲載するようになりました。

2003年と2004年に出版された、第45, 46号「Addenda and Corrigenda to the Etymologies」は、エルフ語をより深く知る上でとくに重要な巻だと思います。タイトルの通り、「The History of Middle-earth」第5巻「The Lost Road and Other Writings」に収録されている「The Etymologies」(語源集) の追補と訂正がその内容です。後述の辞書サイトでも「The Etymologies」と合わせて主要な参照先になっています。
「The Etymologies」は、エルフ語の古い語根がクウェンヤやノルドリンやテレリ語になどにどう変化したかの一覧が載っている辞書です。

※ノルドリン:トールキンの初期の原稿におけるシンダリンの名前

Parma Eldalamberon

「Vinyar Tengwar」と同じく、Elvish Linguistic Fellowshipから発行されており、現在ではトールキン自身の未発表原稿を掲載しているジャーナルです。こちらは、いくつかの巻が絶版になっています。

2007年に出版された、第17号「Words, Phrases and Passages in Various Tongues in The Lord of the Rings」は、前述の「Pedin Edhellen (原著)」の紹介でも触れたとおり、シンダリンの文法が変わるほど重大な内容を含んでいるようですが、残念なことに絶版です。
しかし、有志の手によりシンダリンやクウェンヤの単語だけを抽出した辞書が公開されていたり、海外WikiTolkien Gateway」でもいくつかの項目(Aragorn, Thranduil, Athelas など) でこの資料を参照して名前の意味が解説されていたりなど、その内容の一部を知ることができます。

辞書サイト

Hiswelókë - Sindarin dictionary

長らく更新されてはいないものの、とても充実したシンダリン↔英語辞書です。
Windows/Mac/Linuxで動作する辞書アプリも配布されています。こちらは、単語をテングワールフォントで表示する機能もついています。
(ただし、こちらのアプリも長らく更新されていないため、最近のOSでは動かないかもしれません)

Eldamo

  • URL: http://eldamo.org
  • 作者: Paul Strack
  • バージョン: 0.5.2
  • リリース: 2016/04/01

トールキン言語をおそらく全て網羅した、凄まじい規模の単語・名前・フレーズなどのデータベースです。参照している資料も恐ろしく豊富で、「Vinyar Tengwar」は50号まで、「Parma Eldalamberon」は22号まで (両方とも最新号) の内容を反映しているようです。
単語それぞれのページでは、その単語が登場した一次資料を全て参照していそうな勢いです。さらに、「Gateway to Sindarin」や「Ni-bitha Adûnâyê」など、各言語の主要な二次資料の内容にまで触れています。
これほどのものを作るのに、いったいどれ程の時間と労力が注ぎ込まれたのか、想像もつきません。これほどの労作なのに、サイト自体のソースコードがデータ込みで GitHub で公開されています。やばい。

Parf Edhellen

前述のHiswelókëとEldamoを含む、様々な辞書サイトのデータを一括で検索できるサイトです。やばい。
ちなみに、サイト名は「エルフ語の本」という意味です。

クレジット

この記事はTolkien Writing Dayの参加記事です。
http://bagend.me/writing-day/

筆者: ネルヤ(@goldarn_ring)

2016/09/22